ハードウェアは「自分では音を出さないのに、音を左右する」機材
ドラムの機材を語るとき、どうしてもスネアやシンバルといった「音が出るもの」に話が集中しがちです。でも実際にドラムを組んでみると、その周りを支えている金物——スタンド類・イス・ラック——の存在感に驚くと思います。
これらをまとめてハードウェアと呼びます。ハードウェア自体は音を出しません。それなのに、ぐらつくスタンドはシンバルの鳴りを濁らせますし、高さの合わないイスはペダルの踏み心地そのものを変えてしまいます。
「安いのでいいや」と後回しにされやすい割に、長く使うほど差が出るのがハードウェアだと思います。この記事では、何がハードウェアに含まれるのか、どう選べばいいのか、そしてどの順番で揃えるべきかを整理します。
ハードウェアに含まれるもの
DrumNaviでは、ハードウェアを用途ごとに分類して収録しています。それぞれの役割を見ていきましょう。
シンバルスタンド
クラッシュやライドを支えるスタンドです。大きく2種類あります。
- ストレートスタンド:まっすぐ立てるだけのシンプルな構造。軽く、場所を取らず、価格も抑えめです
- ブームスタンド:先端のアームが斜めに伸びるタイプ。シンバルを好きな角度・位置に配置できます
タムの上をまたいでシンバルを配置したい場合はブームが必要になります。ただしアームが伸びる分だけ重心が偏るので、その分脚の安定性が効いてきます。
ハイハットスタンド
ハイハットを開閉するためのスタンドで、ペダルが一体になっています。ハードウェアの中では最も機構が複雑で、踏み心地が演奏に直結するパーツです。
ツインペダル(ダブルペダル)を使う場合は注意が必要です。通常の3本脚だと左足のペダルと脚が干渉することがあるため、2本脚タイプや、脚の角度を回転させられるモデルを選ぶと解決します。
スネアスタンド
スネアを乗せる「バスケット」の付いたスタンドです。地味に見えますが、バスケットの角度調整の幅は意外と重要で、自分の叩きやすい角度に決まらないとリムショットの安定性に影響します。
タムスタンド・タムホルダー
フロアタムや追加のタムを支えるスタンドです。バスドラムに直接マウントするホルダー型と、独立して立てるスタンド型があります。独立型のほうがセッティングの自由度が高く、バスドラムに穴を開けたくない場合にも使われます。
イス(ドラムスローン)
ドラム用のイスはスローンと呼びます。ハードウェアの中で最も軽視されやすく、そして最も重視すべきパーツだと思います。
座面には主に2種類あります。
- 丸型(ラウンド):回転しやすく、体の向きを変えやすい
- サドル型(バイクシート型):太ももが自然に開き、脚の可動域が広がる
高さ調整はネジ式・スピンドル(回転)式・油圧式などがあり、上位モデルほど微調整が効いて、演奏中にずり下がりにくくなります。
姿勢が安定するとペダルワークが安定し、ペダルワークが安定すると音のばらつきが減ります。イスへの投資は、そのまま演奏の安定性への投資です。
ドラムラック
パイプを組んでフレームを作り、そこにタムやシンバルをまとめてマウントするシステムです。スタンドを何本も立てる必要がなくなり、毎回まったく同じセッティングを再現できるのが最大の利点です。
その反面、価格は高めで、設営・撤収にも手間がかかります。持ち運びが多い人より、自宅やスタジオに据え置く人向けだと思います。
ドラムマット
セットの下に敷くマットです。「あれば便利」程度に思われがちですが、実は3つの役割があります。
- バスドラムとハイハットスタンドの滑り止め(演奏中の前ずれ防止)
- 床の保護
- 振動と音の軽減
特に1つ目は重要で、マットなしで演奏するとバスドラムが少しずつ前に逃げていきます。フローリングの自宅では実質必須と考えていいと思います。
ケース・クランプ
ケースは運搬時の保護用。クランプは、スタンドやラックに追加のパーツを固定するための金具です。
シングルレッグとダブルレッグ、どちらを選ぶか
スタンド選びで最初に出てくる分岐がこれです。脚の先端が1本か、2本に分かれているかの違いです。
| ダブルレッグ | シングルレッグ | |
|---|---|---|
| 安定性 | 高い | 標準的 |
| 重量 | 重い | 軽い |
| 設置スペース | 広く取る | 省スペース |
| 向いている場面 | 据え置き・大音量 | 持ち運び・狭いセッティング |
大きなシンバルを強く叩くならダブルレッグ、頻繁に持ち運ぶ・スタンドを何本も密集させるならシングルレッグ、という選び分けが基本です。
なお、ダブルレッグは接地面が広い分、隣のスタンドと脚がぶつかりやすくなります。セットを組んだときの取り回しも含めて考えるといいと思います。
価格帯の目安
DrumNaviに収録しているハードウェア54機種の実勢価格から、種類別の目安をまとめました。
| 種類 | 価格帯 | 中央値 |
|---|---|---|
| イス(スローン) | ¥5,500 〜 ¥51,000 | ¥27,300 |
| ハイハットスタンド | ¥6,500 〜 ¥98,000 | ¥17,800 |
| シンバルスタンド | ¥5,200 〜 ¥45,100 | ¥13,200 |
| スネアスタンド | ¥4,500 〜 ¥62,480 | ¥11,105 |
| タムスタンド | ¥5,400 〜 ¥52,000 | ¥11,000 |
| ドラムラック | ¥36,300 〜 ¥52,800 | ¥45,000 |
| ドラムマット | ¥17,600 〜 ¥19,800 | ¥18,700 |
| ケース | ¥12,000 〜 ¥32,000 | ¥22,000 |
※価格は調査時点のものです。最新の価格はハードウェアの全モデル一覧でご確認ください。
イスの中央値が¥27,300と、スタンド類より高めなのが目に付くと思います。これは上位モデルほど高さ調整機構と座面の作りにコストがかかっているためで、実際に長時間座ったときの差が最も出る部分でもあります。
揃える順番
いきなり全部を良いものにする必要はありません。優先順位をつけるなら、私はこの順番をおすすめします。
- イス(スローン) — 姿勢が全ての土台になるため。ここだけは最初から妥協しない価値があります
- ハイハットスタンド — 機構が複雑で、安価なものとの差が踏み心地に直結します
- ドラムマット — 自宅がフローリングなら実質必須。滑り止め効果は体感しやすいです
- シンバルスタンド — まずは必要な本数を確保。グレードは後から上げても遅くありません
- スネアスタンド・タムスタンド — 角度が決まれば十分に役目を果たします
なお、入門用のドラムセットにはハードウェア一式が付属していることが多いです。まずは付属品で始めて、不満が出たところから個別に買い替えていくのが、無駄のない進め方だと思います。ドラムセット選びについてはドラム機材の種類と値段の目安もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. ハードウェアはメーカーを揃えるべき?
必須ではありません。スタンド類は各社とも汎用的な規格で作られているため、混在させても問題なく使えます。ただしドラムラックだけは、同一メーカーのクランプでないと固定できない場合があるので注意してください。
Q. 中古のハードウェアはあり?
ありだと思います。ハードウェアは金属製で消耗しにくく、中古でも状態を見極めやすいパーツです。確認すべきは、ネジ山が潰れていないか、高さ調整がしっかり固定されるか、ゴム脚が劣化していないかの3点です。
Q. ハイハットスタンドの「2本脚」は何のため?
ツインペダルを使うときに、左足のペダルとスタンドの脚が干渉するのを避けるためです。ツインペダルを使う予定がなければ、3本脚のほうが安定します。
ハードウェアは、カタログを眺めていてもいちばん地味に見える機材だと思います。でも実際に良いイスに座り、しっかりしたスタンドでシンバルを叩いたときの安心感は、一度体験すると戻れません。
自分に合ったハードウェアが分からないときは、無料の機材診断もぜひ試してみてください。DrumNaviでは引き続き、上達に役立つ情報をお届けします!