クラッシュは「区切り」を作るシンバル
ハイハットがリズムを刻み続け、ライドが曲の景色を支えるとすると、クラッシュは曲の区切りやアクセントで存在感を発揮するシンバルです。サビに入る瞬間、フィルインの締め、曲の最後の一発。1打の印象が、演奏全体の印象を左右します。
だからこそ、選び方の差が音に出やすいシンバルでもあります。「バンドで叩くと埋もれる」「思ったより音が伸びない」といった音の不満には、サイズ・厚さ・合金の組み合わせが関係します。一方で「割れた」という不満には、叩き方や取り付け方も大きく関わります。
DrumNaviに収録しているシンバル63モデルのうち、クラッシュは18モデルです。この記事では、その収録データをもとに、サイズ・厚さ・合金の3つの軸で整理していきます。なお、件数や価格はDrumNaviの収録モデルでの集計で、市場全体の分布を示すものではありません。
サイズ:まず16インチ、2枚目に18インチ
収録18モデルのサイズ分布は次のとおりです。
| サイズ | 収録数 | 傾向 |
|---|---|---|
| 13インチ | 1 | 小口径。反応が速く、音の立ち上がりと消え方が早い |
| 14インチ | 1 | 小さめ。軽く叩いても開きやすく、小音量の場面向き |
| 16インチ | 14 | 最初の1枚として選ばれやすいサイズ |
| 18インチ | 2 | 大きめ。音が太く、伸びが長い |
最初の1枚は16インチを候補にするのが選びやすいと思います。 DrumNaviでも18モデル中14モデルが16インチで、比べられるモデルが多いサイズです。
厚さや設計が近いモデル同士で比べると、口径が大きいほど、一般に音程は低く、音量は大きく、余韻は長くなる傾向があります。一方で、叩いてから「開く」までにわずかに時間がかかり、1打ごとの切れ味は小口径のほうが出やすくなります。
18インチは、バンドの音量が大きくて16インチだと埋もれる、もう少し太さと伸びが欲しい、といった具体的な不満が出てからで遅くありません。2枚目として16インチと組み合わせると、高めと低めの2種類のアクセントを使い分けられるようになります。
※18インチの収録2モデルはいずれも入門シリーズです。「18インチのほうが安い」わけではない点はご注意ください。
厚さ:開きの速さと音量のトレードオフ
サイズと同じくらい音を左右するのが厚さ(重さ)です。モデル名に含まれる「Thin」「Rock」といった言葉が手がかりになります。
- 薄手(Thin):軽い力でも開きやすく、柔らかく広がる傾向があります。小さめの音量でもきれいに鳴りやすいので、ポップスやジャズ、小さな会場で扱いやすいです。収録では Paiste PST7 Thin Crash 14”、Zildjian K Dark Crash Thin 16” が該当します
- 中間(Medium):用途を選びにくく、迷ったときの出発点になります。なお、名前に厚さの表記がないモデルが中間の厚さとは限らないので、メーカーの仕様で確認してください
- 厚手(Rock / Heavy):開くのにしっかりした力が要るぶん、音量が出て、音が前に抜けやすくなります。大音量のロックやメタルで埋もれにくい一方、小さな音量ではきれいに開ききらないこともあります。収録では SABIAN の B8X・AA・XSR の各 Rock Crash が該当します
余韻の長さは、厚さだけでなくサイズや合金、加工によっても変わります。同じ「Thin」でもモデルによって印象はかなり違うので、表記は目安と考えてください。
もうひとつ注意したいのは、「厚いほうが割れにくい」とは言い切れないことです。厚手でも、叩き方や取り付け方が合っていなければ割れることがあります(後述)。厚さは耐久性ではなく、音量と開き方で選ぶのが基本だと思います。
合金:ブラス・B8・B20の違い
価格差が出やすいのが合金です。収録モデルのうち、2026年9月にメーカー公式サイトで合金を確認できたシリーズを並べると次のようになります(出典は記事末尾)。
| 合金 | シリーズ(収録モデルの実勢価格) | 傾向 |
|---|---|---|
| ブラス(真鍮) | Zildjian Planet Z(¥7,200・18” ¥8,500)/Paiste PST3(¥8,800)/Meinl HCS(¥10,000・18” ¥12,000)/SABIAN SBR(¥10,000) | 入門シリーズに多い素材 |
| B8ブロンズ(銅92%・錫8%) | Paiste PST7 Thin 14”(¥12,000)/SABIAN B8X(¥18,000・Rock ¥22,000)/Paiste 2002(¥30,000) | 入門〜上位まで幅広く使われる |
| B20ブロンズ(銅80%・錫20%) | SABIAN AAX(¥28,000)/SABIAN AA Rock(¥35,000)/SABIAN XSR Rock(¥35,997) | 中級〜プロ向けのシリーズに多い |
※Zildjian A は公式のシリーズページに合金の記載が見当たらず、Zildjian K・K Custom、Istanbul Agop XIST、Stagg SH は今回合金を確認していないため、表に含めていません。Paiste 2002 は、Paiste公式の PST 7 のページにある「CuSn8 Bronze, also known as “2002 Bronze”」という記述を根拠にB8系としています。
収録モデルで見ると、大まかにはブラス → B8 → B20 の順に価格が上がる傾向があります。ブラス製の収録モデルは¥7,200〜¥12,000で、予算を抑えたい場合の候補になります。音色や余韻はモデルごとに違うので、素材だけで決めずに確認してください。
ただし、合金だけでグレードは決まりません。分かりやすい例が Paiste 2002 で、合金はB8系(Paiste は「2002 Bronze」と呼んでいます)なのに、実勢価格は¥30,000とB20のSABIAN AAXを上回ります。仕上げや加工の手間、シリーズの位置づけでも価格は大きく変わります。合金はシリーズの位置づけをつかむための目安と考えるのがよいと思います。
価格帯の目安
収録18モデルの登録価格(実勢価格の目安)は**¥4,200〜¥39,000、中央値¥20,000**でした。
シンバルの種類ごとに収録モデルの中央値を並べると、次のようになります。
| 種類 | 収録数 | 中央値 |
|---|---|---|
| ハイハット | 14 | ¥19,500 |
| クラッシュ | 18 | ¥20,000 |
| ライド | 26 | ¥67,500 |
※ハイハットは一般に2枚1組で販売されるため、1枚で販売されるクラッシュ・ライドとは価格の単位が異なる場合があります。収録モデルの構成によって中央値は変わるため、相場の目安ではなく「DrumNaviの収録範囲での参考」としてご覧ください。
最初の1枚を収録モデルから選ぶなら、たとえば次のような価格帯の分け方になります。
- 1万円前後まで:Zildjian Planet Z 16”(¥7,200)、Paiste PST3 16”(¥8,800)、SABIAN SBR 16”(¥10,000)、Meinl HCS 16”(¥10,000)
- 2万円前後:SABIAN B8X 16”(¥18,000)、SABIAN B8X 16” Rock Crash(¥22,000)、Zildjian A 16”(¥22,000)
- 3万円前後から:SABIAN AAX 16”(¥28,000)、Paiste 2002 16”(¥30,000)、SABIAN AA Rock Crash 16”(¥35,000)
使っていくうちに「バンドで埋もれる」「もっと柔らかく広がってほしい」といった不満がはっきりしてきたら、そのとき合金を限定せずに、必要な音量・反応・音色で比べ直すと無駄がないと思います。
※価格はDrumNaviに登録している実勢価格の目安で、販売店や時期によって変わります。最新の情報はシンバルの全モデル一覧でご確認ください。
置き場所と、割れるリスクを減らす扱い方
置き場所
1枚目のクラッシュは、ハイハットの上あたりに置くのが一般的です。右利きのセッティングなら、ハイハットを刻んでいる右手からも、スネアを叩いている左手からも届きやすい位置です。2枚目はライドの近くに置くと、左右でアクセントを振り分けられます。
高さと角度は、スティックのショルダー(チップとシャフトの間の、先端に向かって細くなる部分)がエッジ付近を横へ払うように当たる位置に調整します。自分の構えとスティックの軌道に合わせて決めるもので、決まった角度があるわけではありません。
割れるリスクを減らす4つのポイント
クラッシュは、強く叩く場面が多く、エッジに力が集中しやすいシンバルです。叩き方やセッティングの癖が、負担として積み重なります。次の4点で、割れるリスクを減らせます。
- エッジ付近を横へ払うように叩き、縁へ正面から打ち込まない。スティックの先を縁に突き刺すように当てると、力が逃げずに負担が大きくなります。必要以上に強く叩かないことも大切です
- ウィングナットを締めすぎない。シンバルが揺れる余地がないと、振動の逃げ場がなくなります
- フェルトとスリーブを必ず使う。スタンドの金属の芯棒にシンバルの穴が直接当たると、穴のまわりから傷んでいきます
- ほかのシンバルやスタンドに当たらない位置に置く。叩いて揺れたシンバルのエッジが、隣のシンバルやスタンドの金属部分にぶつかると、そこから傷みます。揺れる幅を見込んで間隔をあけてください
ひびの入ったシンバルは、基本的に元には戻りません。中古で買うときは、表裏全体のひび、エッジの欠け、取り付け穴の変形、修理の跡を確認し、可能なら試奏してください。
2枚目のクラッシュをどう選ぶか
ロック・ポップスを想定すると、シンバルを揃える順番はハイハット → クラッシュ → ライドがひとつの例です(ジャズなどではライドを優先する場合もあります)。ライドまで揃ったあと、次に足す候補になりやすいのが2枚目のクラッシュです。
2枚目は、1枚目と違う音になるものを選ぶのが基本です。同じサイズ・同じ厚さでもモデルが違えば音は変わりますが、サイズか厚さを変えると違いを出しやすくなります。できれば手持ちの1枚と叩き比べて選んでください。
- サイズを変える:16インチ+18インチ(高め/低めを使い分ける)
- 厚さを変える:薄手+ロッククラッシュ(柔らかい広がり/鋭い抜けを使い分ける)
どちらにするかは、叩いている音楽で決めてよいと思います。サビでの大きなアクセントが多いならサイズ違い、曲の中で表情の差をつけたいなら厚さ違い、という考え方が出発点になります。
ハイハット選びはハイハットの選び方、ライド選びはライドシンバルの選び方にまとめています。シンバル全体の種類やメーカーの特徴から知りたい方は初心者のためのシンバル選び完全ガイドもどうぞ。
出典(合金の確認)
2026年9月にメーカー公式サイトで確認しました。
- SABIAN SBR(“pure SABIAN Brass”):https://sabian.com/cymbal-series/sbr/
- SABIAN B8X(B8 bronze alloy):https://sabian.com/cymbal-series/b8x/
- SABIAN AAX / AA / XSR(B20):https://sabian.com/cymbal-series/aax/ ・ https://sabian.com/cymbal-series/aa/ ・ https://sabian.com/cymbal-series/xsr/
- Paiste PST 3(MS63 Brass):https://www.paiste.com/en/products/series/pst-3
- Paiste PST 7・2002(CuSn8 Bronze, also known as “2002 Bronze”):https://www.paiste.com/en/products/series/pst-7
- Zildjian Planet Z(Crafted from brass):https://zildjian.com/collections/cymbals-drum-set-planet-z
- Meinl HCS(MS63 brass alloy):https://meinlcymbals.com/en/cymbals/HCS
- Zildjian A(シリーズページに合金の記載なし):https://zildjian.com/collections/cymbals-drum-set-a-family-a-zildjian
クラッシュは、1打の印象が演奏全体を左右するシンバルです。スペックの傾向をつかんだうえで、できれば試奏して「自分の曲の区切りに合う音か」を確かめてみてください。
自分の条件に合うシンバルを絞り込みたいときは無料の機材診断もぜひどうぞ。DrumNaviでは引き続き、上達に役立つ情報をお届けします!