私自身、ライブになるとどうしてもハシって(走って)しまう癖のあるドラマーでした。同じ悩みを持つドラマーは多いと思います。
この記事では自分が実際に試して効果を感じた練習と先輩から受けたアドバイスを分けて紹介しながら、走る・もたる癖の見つけ方と直し方をまとめます。
まず、自分がどうズレているかを知る
リズムの問題で難しいのは、叩いている本人がズレに気づきにくいことです。走っているのか、もたっているのか、どの楽器がズレているのか——演奏中の感覚だけでは判断できません。
録音して、遅くして聴く
一番確実なのは、自分の演奏を録音して聴くことです。さらに再生速度を落として聴くと、通常の速度では気づかないズレや癖がはっきり分かります。
私の場合は録音した自分の音を何度も聴くことで、バスドラムがややもたる傾向があると分かりました。
癖があること自体は仕方がありません。大事なのは、どこがどうズレているのかを具体的に把握することです。「なんとなくリズムが悪い」では直しようがありませんが、「サビでバスドラムが遅れる」まで分かれば練習の方向が決まります。
録音はスマホで十分です。練習メニューへの組み込み方はドラムの練習メニューの作り方で紹介しています。
走る(ハシる)原因と直し方
心拍数が上がると、テンポが遅く感じることがある
私の経験では、ライブで緊張や興奮によって心拍数が上がるといつもの曲が遅く感じやすくなりました。普通に叩いているつもりでも体感と実際のテンポがずれて、結果として速くなっていく。私がハシっていたのはこれが一因だったと思っています。
走る原因は人によって違いますが、「ライブ中は自分の体感テンポが普段と変わることがある」と意識しておくだけでも向き合い方が変わるはずです。
速い曲と遅い曲を交互に叩く
ハシる癖があった私が、実際にやって効果を感じたのがこの練習です。先輩から教わりました。
- BPM160以上の速い曲を流しながら叩く
- すぐにBPM80くらいのバラードを叩く
- これを交互に繰り返す
速い曲と遅い曲を交互に挟むことで、私はある程度自分の中のテンポの基準を養えたと感じています。心拍数が上がった状態で遅い曲を叩くことに少しずつ慣れていくイメージです。クリック(メトロノーム)を使えない場面を想定した練習として、割と有効だと思います。
小さい音量のときほど揺れやすい
小さなライブハウスなどで音量を抑えて叩くと、腕の振りが小さくなってリズムが揺れやすくなります。小さな音で安定して叩くのは、大きく叩くよりもはるかに技術が要ります。
音量を抑えなければいけない場面では、細く短いスティックに替えたりミュートを少し増やしたりと、機材側で調整するのも一つの方法です。スティックの素材によっても音量や音色は変わるので、スティックの木材による違いも参考にしてください。
もたる原因と直し方
私の場合はバスドラムが遅れていました。演奏によっては、特定の楽器を確認すると原因が見つかることがあります。
楽器ごとに分けて確認する
もたっているときは、どの楽器が遅れているのかを切り分けます。バンド全体の録音からは判断しにくいので、気になるパートを単独で叩いて録音するのがおすすめです。電子ドラムなどでトラックを分けて録れるなら、それを使うと原因が見えやすくなります。
難しいフレーズでもたつく場合は、フレーズを分解するのが有効です。
- 右手だけで叩く
- 右手と左手だけで叩く
- 右手と右足だけで叩く
- 右手・左手・右足で叩く
- 全体で叩く
こうして順に組み立てていくと、どこでつまずいているのかがはっきりします。
本番直前の応急処置
これは私が個人的に使っている応急策です。ライブ当日にバスドラムの遅れをどうにかしたいときは、スパー(脚)を少し長くします。バスドラムがわずかに奏者側へ傾いて、ビーターが当たるタイミングが少し早まります。
ただし、次の点には注意してください。
- 左右のスパーの高さを必ず揃える
- 本番直前に初めて試さない。事前にリハーサルやスタジオで試しておく
- 傾けたあとにバスドラムが安定しているか、ビーターが打面の適切な位置に当たっているかを確認する
機材やペダルの状態によって効果は変わりますし、あくまで当日をしのぐための工夫です。根本的な解決にはならないので、普段の練習で直していくことが前提です。
リズムキープを鍛える練習
BPM40で8ビートを叩く
リズムキープがうまくいかなかった時期に、先輩からもらったアドバイスです。
BPM40で8ビートやチェンジアップができれば、それより速いテンポはだいたい大丈夫。
これは先輩から受けた一つの目安で、速いテンポでの安定を保証するものではありません。ただ、考え方としてはとても参考になりました。
ゆっくりのほうが簡単に思えますが、そうとは限りません。休符(音と音の隙間)が多いほどリズムはぶれやすく、隙間が少ないほど一定に保ちやすいからです。BPM40の8ビートは隙間が大きい分、自分の中のテンポの基準が試されます。いきなりBPM40が難しければ、叩ける遅めのテンポから少しずつ下げていってください。
8ビートそのものの叩き方は8ビートの叩き方にまとめています。
両手両足で同時に叩く
意外と難しいのがこれです。
- BPM100くらいで、両手両足で4分音符を同時に叩く
- 左足はハイハット(ツインペダルならキック)
やってみると、意外と微妙にズレます。何度も繰り返すうちに、手足のコンビネーションがきれいに揃ってくるのでおすすめです。
メトロノーム練習は初期から
これは私自身が遠回りしたので、特に初心者の方に伝えたいことです。メトロノームを使った練習は、始めたばかりの時期からやるべきだと考えています。
「グルーヴが機械っぽくなるからやらないほうがいい」という意見を聞くことがありますが、人間が叩く以上は機械のように正確に叩けることはありません。まずは一定のリズムをキープできることが先です。
具体的なやり方はメトロノーム練習の効果的なやり方で詳しく解説しています。
バラードを侮らない
速い曲のほうが難しく聞こえがちですが、私はバラードのほうがずっと難しいと感じています。特にシンプルな8ビートで最後まで進む曲は、隙間が多い分ごまかしがききません。音を鳴らすことより、鳴らさない時間をどう保つかが問われます。
本番でズレないために
カウントは全力で出す
曲のカウントはドラマーが出すことが多いはずです。スティックでカウントを取るときは、声も張って全力で鳴らしたほうがいいです。フロントマンまで届かないと、曲の頭からバンド全体がズレてしまいます。
体調を整える
ドラムは全身を使う楽器なので、体調とパフォーマンスが連動しやすいです。私の経験上、体調が悪いときは思った動きに対してほんのわずかなズレが起きやすくなります。本番は万全の体調で臨みたいところです。
「走ってる」と言われたら
人前で演奏していると、「リズムが走っている」「グルーヴが足りない」と指摘されることがあります。
的確な指摘なら、改善のきっかけになります。ただ、中にはあまり根拠のない指摘もあります。そういうときは**「具体的にどこでそう感じましたか?」と聞いてみる**のがおすすめです。すぐに具体的な答えが返ってこない場合は思いつきで言っていることも多いので、話半分に聞いておけば十分です。
いずれにしても、重要な判断材料の一つは録音です。指摘を受けたら、その部分を録音して自分の耳で確かめてみてください。
まとめ
リズムキープを改善する第一歩は、録音して自分がどうズレているかを具体的に知ることです。
- 私の場合、走る一因は心拍数が上がって体感テンポがずれることでした。速い曲と遅い曲を交互に叩く練習は、私には効果がありました
- もたる癖は、楽器ごと・フレーズごとに分解して確認すると原因が見えやすくなります
- 先輩から教わったBPM40の8ビートや両手両足の同時打ちは、テンポの基準を鍛える練習として参考になります
- メトロノーム練習は初期から始めたほうが遠回りしません
リズムの癖は、多くのドラマーに起こりうるものです。私自身、ハシる癖もバスドラムがもたる傾向もありました。癖があること自体は仕方がないので、まずはズレを知って一つずつ向き合っていくことだと思います。焦らず、録音と付き合ってみてください。