スタジオに入ったはいいものの、とりあえず知ってる曲を何回か叩いて気づいたら時間が終わっていた——という経験はないでしょうか。家で練習パッドを前にしても何をすればいいか分からず、5分で飽きてしまうという話もよく聞きます。
叩いた時間の長さは、上達の量とはあまり比例しません。何をどの順番でどれくらいやるかが決まっているかどうかで、同じ1時間の中身が変わります。
この記事では、練習メニューの組み立て方を整理します。特定の曲やフレーズの練習法ではなく、自分で自分のメニューを作れるようになることを目的にしています。
練習メニューは4つのブロックで考える
細かい内容を決める前に、まず「枠」を用意すると考えやすくなります。おすすめは次の4つです。
| ブロック | 目的 | 配分の目安 |
|---|---|---|
| ① ウォームアップ | 体をほぐし、その日の調子を確かめる | 1割 |
| ② 基礎 | 手足のコントロールを積み上げる | 3〜4割 |
| ③ 課題 | 「今できないこと」を潰す | 3〜4割 |
| ④ 通し・遊び | 曲を叩く。楽しむ | 1〜2割 |
配分はあくまで目安なので、合計が10割になるようにその日の目的で前後させてください。後述の時間別の例も、この比率どおりではなく少しずつ違います。
① ウォームアップ
いきなり全力で叩き始めると、フォームが崩れたまま固まってしまいます。ゆっくりしたテンポでシングルストローク、手首の開閉、足の上下——このあたりを数分。
ここは「上達のための時間」というより、その日の自分の状態を知る時間だと考えるといいと思います。いつもより手が重い日は、後のメニューを軽くする判断ができます。
② 基礎
シングルストローク、ダブルストローク、パラディドル、足のシングル。地味ですが、ここの精度がそのまま曲での余裕になります。
基礎はメトロノームと一緒にやるのが前提です。やり方はメトロノーム練習の効果的なやり方にまとめています。また、そもそも力の入れ方が間違っていると基礎練習が逆効果になることもあるのでフォーム・グリップの基礎も一度確認しておくと安心です。
③ 課題
その日一番時間を使うべきブロックです。ポイントは、主課題を一つに絞ること。
「16分のフィルも、足のダブルも、ジャズのレガートも」と欲張ると、どれも中途半端なまま終わります。今週は「16分のフィルを走らせない」を主課題にする、と決めたほうが結果的に早いです。
「今週のテーマ」とだけ決めても実行内容が定まらないので、次のように書き出しておくと迷いません。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 主課題 | 16分のフィルを走らせない |
| 開始テンポ | ♩=80 |
| 合格の条件 | テンポが揺れず、音量が揃い、力まずに8回連続で叩ける |
| 期間 | 1週間(週3回) |
| 記録すること | 日付・テンポ・できた回数 |
8ビートそのものが不安定という場合は、フィルの前に8ビートの叩き方を固めたほうが早いと思います。
④ 通し・遊び
最後は曲を通して叩いたり、好きなフレーズを気持ちよく叩いたりする時間です。練習が苦行になると続かないので、このブロックは削らないほうがいいと思います。
課題ブロックでやったことを、曲の中で使ってみる場にもなります。
時間別のメニュー例
30分(家・練習パッド)
家では足が使えないことが多いので、手のコントロールに寄せます。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 3分 | ゆっくりシングルストローク |
| 12分 | 基礎(ダブル・パラディドルなど1〜2種類) |
| 12分 | 課題(今週のテーマ) |
| 3分 | 好きなフレーズを叩く |
パッドの選び方は練習パッドの選び方にまとめています。
60分(電子ドラム・自宅セット)
足が使えるなら、手足のバランスを見る時間を入れます。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 5分 | ウォームアップ |
| 20分 | 基礎(手+足) |
| 25分 | 課題 |
| 10分 | 曲を通す |
自宅での音の問題は電子ドラムの消音対策を参考にしてください。
スタジオ2時間
スタジオは「家でできないこと」に使うのが基本です。音量を出す、生のセット全体を鳴らす、録音する。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 10分 | セッティングとウォームアップ |
| 25分 | 基礎(家では確認しにくい足回り中心) |
| 45分 | 課題 |
| 30分 | 曲を通す・録音する |
| 10分 | 録音を聴き返す・片付け |
録音を聴き返す時間と休憩をメニューに入れておくのがおすすめです。叩いている最中の感覚と、外から聴いた音は違って聞こえます。録音はスマホで十分です。
家でやること、スタジオでやること
| 向いていること | |
|---|---|
| 家(パッド・電子ドラム) | 反復、フォームの確認、リズムの精度、手のコントロール |
| スタジオ(生ドラム) | 音量のコントロール、足回り、セット全体のバランス、録音 |
家の練習は「回数を稼ぐ」、スタジオは「答え合わせをする」と考えると配分しやすいと思います。家で何度も叩いたフレーズが、生ドラムだと違う音に聞こえることは珍しくありません。
なお、これは絶対的な線引きではありません。電子ドラムがあれば家でも足回りは練習できますし、フォームの確認は鏡やスマホの動画があると家のほうがやりやすいこともあります。手元の環境に合わせて振り分けてください。
メニューを作るときの4つの原則
1. 課題は1回に一つ
前述のとおりです。複数あるなら、日替わりにするか週で分けます。
2. 「できない速度」で練習しない
叩けないテンポで繰り返すと、崩れたフォームのほうが身につきやすくなります。目安として、8回連続で崩れずに叩けるテンポから始めるとよいと思います。ここでの「崩れない」は、テンポが揺れない・音量が揃う・力みがないの3つで判断しています。
テンポを上げるときは一気に20も30も上げず、1〜5くらいずつが現実的です。細かい動きの課題では、1ずつでも十分に負荷が変わります。
3. 録音する
自分の演奏は、叩いている本人が一番正確に聴けません。走っているか、もたっているか、音量が揃っているか——録音すると確認しやすくなります。
4. 時間ではなく「できた回数」で区切る
「10分やる」より「崩れずに8回叩けたら次」のほうが、だらだらせずに済みます。時間で区切ると、できていなくても時間がきたら終わってしまいます。
伸び悩むときにありがちなこと
- 叩ける曲・叩けるフレーズばかり練習している — 気持ちいいのですが、できることを繰り返してもできることは増えません
- 毎回メニューが違う — 昨日やったことを今日やらないと、定着する前に次へ行ってしまいます。主課題は1週間ほど続けてみて、手応えを見てから変えるといいと思います
- 疲れてからも同じ強度で続けている — 集中が切れた状態の反復は、崩れたフォームを刷り込むことになりかねません。短くても、集中している時間のほうが価値があります
- 基礎を飛ばして曲だけやっている — 短期的には曲が叩けるようになりますが、新しい曲のたびにゼロからになります
痛みが出たら、その日はやめる
練習の話をするとき、ここは飛ばせません。手首・肘・肩・腰に痛みやしびれが出たら、その日は中断してください。「もう少しだけ」で続けた結果、数週間叩けなくなるほうが損失は大きいです。
力みが抜けない日や、いつもの半分のテンポでも音が揃わない日も同じです。負荷を下げるか、思い切って休んだほうが結果的に早いことがあります。痛みが続く場合は整形外科の受診も検討してください。
続けるための工夫
メニューは作って終わりではなく、続いて初めて意味があります。
効果を感じやすいのは、記録をつけることです。ノートでもスマホのメモでも、「日付・やった内容・テンポ・できたかどうか」だけで十分です。3週間前のテンポと今日のテンポを見比べられると、地味な基礎練習にも手応えが出てきます。
また、毎日やろうとすると挫折しやすいので週単位で考えるのもおすすめです。「週に3回、1回30分」と決めておけば1日できなくても取り返せます。
ドラム全体の始め方についてはドラム初心者の始め方完全ガイドにまとめているので、これから始める方はそちらもどうぞ。
まとめ
練習メニューは、ウォームアップ・基礎・課題・通しの4ブロックで組み立てると考えやすくなります。課題は1回に一つ。叩ける速度から始めて録音で答え合わせをする。家では回数を稼ぎ、スタジオでは家でできないことをやる。
最初から完璧なメニューを作る必要はありません。1週間やってみて長すぎたブロックを削り、足りなかったところを足す。それを繰り返すうちに自分に合った形が見えてくると思います。