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音楽マーケティングの基本|「誰に売るか」が何百倍も重要な理由

バンド・ミュージシャン・楽器店・音楽教室のためのマーケティング入門。書籍『バンドで飯を食っていく』でも紹介してきた『腹を空かせた群衆』の話をもとに、なぜ『誰に』が『何を』より大事なのかを解説します。

「いい曲を作っているのに、なぜ売れないんだろう?」 「練習も機材も最高なのに、お客さんが集まらない…」

バンドマン、ミュージシャン、楽器店経営者、音楽教室講師——音楽に関わる全ての人が一度は突き当たる壁です。

そこで今回は、著書『バンドで飯を食っていく』でも繰り返しお伝えしているマーケティングの基本的な発想と、おおまかな流れを書いていきます。

「マーケティングって難しそう」と感じるかもしれません。でも、本質はシンプルです。読み終わる頃には、明日からのバンド活動や音楽ビジネスの見え方が変わっているはずです。


マーケティングとは「誰に・何を・どうやって売るか」を考えること

まずマーケティングとは、僕の定義では「誰に・何を・どうやって売るか」を考えていく一連の流れです。

たった3つの要素ですが、この順番がとても大事です。なぜなら、特に「誰に」という部分が、ほかの2つを合わせたよりも何百倍も大事だからです。

「え?売るんだったら『何を売るか』の方がよっぽど大事じゃない?」

そう思いますよね。気持ちは分かります。

僕も、最初はそう思っていました。「とにかく最高のものを作れば売れるはず」「クオリティが正義」と信じていた時期がありました。

でも実際には「なにを売るか」よりも「誰に売るか」の方が、何百倍も大事です。これを物語る、キャッチコピー業界では有名なエピソードを紹介します。


「腹を空かせた群衆」のエピソード

あるところに、一人の男がいました。

その男は、経営者が集まる場でこう言い放ちます。

「あなたたちと私で、どちらがチキンをたくさん売れるか勝負してみたいんだが、どうだろう?私は絶対に負けない自信がある。」

周りはプロの経営者ばかり。緊張感が漂う空気を切り裂くように、男はさらに続けます。

「ひとつ、あなたたちが望むものを何でも差し上げよう。立地かな?それとも、ものすごく美味しい味付けのレシピかな?」

経営者たちは口々に叫びます。

「立地さえ良ければ必ず売れる!」 「いや、味だ!美味しければ人は集まる!」 「ブランド力だ!」「価格だ!」「広告だ!」

そんな議論が飛び交う中、男は笑みを浮かべてこう言いました。

「いいだろう。あなたたちが望むものはすべて用意しよう。ただし、すべてを揃えたとしても、私には勝てないと思うがね。」

経営者たちは戸惑い、男に対して疑惑を抱き始めました。中には詐欺呼ばわりする者も出てきます。

男はにやりと笑って、最後にこう言いました。

「OK、わかった。あなたたちが私に勝てない理由を説明しよう。私が欲しいものはたった一つだけ。これさえあれば、どんな立地やレシピを用意されても、私に勝つことはできない。」

その「たった一つ」とは——

腹を空かせた群衆だよ。」


このエピソードが教えてくれること

この話を聞いて、あなたはどう感じたでしょうか?

どの経営者も「自分たちが」「店が」「製品が」という売り手視点にばかり気を取られていて、肝心の顧客(お客さん)を見ていなかったことが分かります。

活字にすれば当たり前の話です。でも現実には「製品さえ良ければ必ず売れる」という発想(プロダクトアウト思考)は、いまだに後を絶ちません。

これは音楽業界も全く同じです。

  • 「うちのバンドは音楽性が最高だから売れるはず」
  • 「うちの楽器店は品揃えが日本一だから来てくれるはず」
  • 「うちの教室は講師の質が業界トップだから生徒は集まるはず」

すべて、売り手目線です。


僕もプロダクト志向の罠にハマっていた

正直に告白すると、僕自身もプロダクト志向の罠によくハマります。

動画や記事を頑張って作って、「これは最高の出来だ!」と自信満々で公開する。だけど、結果は散々——というのは何度も経験してきました。

そこで何が起こるかというと、僕は心の中でこう思ってしまうのです。

「この価値が分からないなんて……世間がおかしい」

自分が提供している価値が、世間のニーズからズレているという事実を棚に上げて、他でもないお客様を批判しようとしている自分に気付いた瞬間、ハッとします。

違う。 いま、インターネットの向こうにいる人たちが欲しい情報は、これじゃないんだ。

そう思えたら、次にやるべきことは2つしかありません。

① 自分が提供しているものに価値を感じてくれる人を探すこと

世界中の全員に響くコンテンツなど存在しません。でも、あなたの提供する価値を心から欲している人は必ずどこかにいます。マーケティングの本質は、その人たちを見つけ出す作業です。

② どうやってその人たちに、タイムリーに情報を届けるか

価値を感じてくれる人が見つかったら、次は届け方の設計です。SNS、ブログ、ライブ、メルマガ、口コミ——どのチャネルで、どのタイミングで、どんな形で届けるか。これが「どうやって」の部分です。

たったこれだけです。


バンド・ミュージシャンに置き換えると?

「腹を空かせた群衆」の話をバンドに置き換えると、こうなります。

  • 腹を空かせた群衆あなたの音楽を心から欲している層(ファン候補)
  • チキンあなたの楽曲・パフォーマンス
  • 立地・味・レシピ技術・機材・楽曲クオリティ

クオリティを上げることは確かに大切です。でも、それだけでは「お腹が空いていない人」には何も届きません。

逆に、もしあなたが「ジャズ・フュージョン系のドラムサウンドが大好きで、機材オタクで、毎月1万円は機材に投資する」という人だけに向けて発信していたら?

クオリティの絶対値はそこそこでも、刺さる人にはガッツリ刺さるコンテンツになります。


「誰に」を明確にする3つのステップ

では、具体的に「誰に」を明確にするにはどうすればいいでしょうか。

ステップ1:理想の1人を徹底的に描く

ターゲット像(ペルソナ)を、年齢・性別だけで終わらせず、実在の人物が浮かぶレベルまで描き込みます。

  • 平日の何時に何をしている?
  • 何に困っている?
  • どんなSNSを見ている?
  • 月の可処分所得は?音楽にいくら使う?
  • 過去にどんな音楽を「最高だ」と思った?

ステップ2:その人が「いま」何に飢えているかを掘り下げる

その人が昨日感じた不満・不安・憧れを10個書き出してみます。表面的な悩みではなく、「口に出すのは恥ずかしいけど本音はこう思っている」というレベルまで掘ります。

ステップ3:その人がいる場所に行く

ターゲットが明確になったら、その人がすでに集まっている場所に出ていきます。

  • 楽器店イベント?
  • 特定ジャンルのSNSハッシュタグ?
  • 練習スタジオ?
  • 音楽教室?
  • 機材レビューブログ?

新しい場所をゼロから作るのではなく、腹を空かせた群衆がすでにいる場所を見つけてそこに行く。これが鉄則です。


DrumNaviでの実践例

DrumNaviでも、この発想を徹底しています。

たとえば機材診断ツールは、「ドラム機材を選びたいけど何を買えばいいか分からない」という具体的な悩みを抱えた人——つまり腹を空かせた群衆——に対して、答えをすぐに提示できる設計にしています。

また、ライブハウス経営者や楽器店向けに補助金・助成金ガイド、業界転職を考える人向けに音楽業界の求人ガイド、ドラマー向けにスネア素材の徹底比較ドラムヘッドの選び方——というように、ターゲット別に深く刺さるコンテンツを意識して用意しています。

「ドラマー全員」という曖昧なターゲットではなく、「今、この情報を必要としている人」に向けて作るからこそ、検索からの流入で繋がれる仕組みです。


まとめ:マーケティングは「誰に」から始まる

最後にもう一度整理します。

  1. マーケティング = 「誰に・何を・どうやって売るか」を考える流れ
  2. 「誰に」が「何を」より何百倍も重要
  3. 腹を空かせた群衆を見つけることが、最高のレシピより強い
  4. プロダクト志向(製品さえ良ければ売れるはず)の罠に注意
  5. 価値を感じてくれる人を探し、その人に届ける——この2つを繰り返す

バンドマンも、楽器店経営者も、音楽教室も、講師も、フリーランス・ドラマーも、結局やることは同じです。

「自分の音楽(製品)に飢えている人は、誰なのか?どこにいるのか?」

この問いに答えられるようになったとき、初めて「売る」というステージが見えてきます。

著書『バンドで飯を食っていく』では、このマーケティングの考え方をさらに具体的なバンド運営の現場に落とし込み、ライブ集客・SNS運用・グッズ展開・物販戦略・配信収益化まで踏み込んで解説しています。興味のある方は、ぜひ手に取ってみてください。

DrumNaviでは引き続き、機材選びだけでなく音楽で飯を食っていくための実務情報もお届けしていきます!

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この記事を書いた人

まさ

ドラムメーカーのマーケティングマネージャー。元V系インディーズバンドのドラマー&ドラム講師。 中小企業診断士として、ビジネスと音楽の両面からドラム・機材情報を発信しています。

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